第8章　「自由と責任を教える13歳の成人式」

13歳の「成人式」

2022年8～9月までシリーズ記事として、福山ゆり著アマゾン書籍「世界を動かすユダヤ人の子育て１４の秘訣」から各章のポイントをご紹介してきました。第8回目（第7章）まで連載した後、お休みしていた後半記事を、再スタートいたします！

先回第7章では「幼い頃から徹底化する“お金の教育”」編でした。ポイントを再度整理すると…‘経済に強い民族’として名高いユダヤ人家庭には、幼い頃からの「お金の英才教育」が存在しています。“お金に対するイメージを肯定的なものにする！”というEQ教育が前提となり、“お金とどう付き合うのか？”というIQ教育、さらに実際に（13歳の成人式後に）“お金を管理・運営していくトレーニング（実践）”を家庭で行うことが、「経済に強くなる（お金の主人になる）秘訣」であるとご紹介しました。

子供たちに「お金に苦労させない人生」を送らせたいならば、親である私たち自身のEQ・IQ・実践がまずは変わっていくことが必要です。特に「対話習慣」や「お金に対する態度」は幼少期から親の影響を強く受けるため、子育てにおいて特に注意すべき点だと思います。

３つの贈り物

さて、今回はユダヤ人にとっては、大切な生涯イベントの一つ「13歳の成人式の意義」についてご紹介します。ユダヤ人の子供たちは満13歳になると家族やユダヤコミュニティで「バル・ミツバ」という成人式を行うのが恒例ですが、これは「精神的（信仰的）な親からの自立と独立」を意味します。

しかし、ただ単に成人として全ての自由を許し「これからは、お前の好きにしていいよ～」という儀式ではありません。13歳以降の子供に与える自由とは「放任」でなく、結果に対する責任が伴うことを教える大切な教育のプロセスなのです。
この成人式には家族・親戚から３つの贈り物がされます。

1. トーラー（聖書）：お客さんの前で聖書の特定箇所を読み、その解釈を自分自身の言葉でさせる。（この準備を数か月前からさせると言われます。幼少期から親子でハブルータ経典学習をしてきた成果を披露する場）
2. 腕時計：限りある時間を大切にして生きていきなさい、また「他人の時間」を奪う人になってはいけないという意味があると言われます。
3. 祝賀金：この時にもらうお金を「頭金」として、親と一緒に株取引をしたり等、運用次第では大学学費や将来の事業資金になるように数年前から準備します。

私はこの３つの贈り物を通して、ユダヤ人の親達は我が子に「強いアイデンティティを土台（聖書）として、自己管理と共に善き人間関係を築く術を伝え（時計）、社会に出ていく為の実質的な準備（祝賀金運用を通した、お金のEＱ・IQ・実践教育）」をしていると思います。

成人式の本来の意義

ユダヤ式家庭教育が賢明な点は、思春期・反抗期（親からの自立を願いだすタイミング）である13歳に「精神的（信仰的）な自立」を親自らが用意することだと思います。ただし、そのためには前提条件があります。その条件とは、13歳までは親が責任をもって「選民教育」を施す、ということです。13歳の成人式を無事に迎えることは「親の必死の選民教育の結果」得ることができるのであり、ただ単に誕生日が来たから自動的に与えられるのはないのです。

子供の成人式は、まさに親自身の「子育てからの解放の瞬間」。育児のゴールデンタイムである12歳までに「親子間の深い信頼関係をベースとした、信仰・文化伝統等の価値観の継承」をしっかり行っているからこその「成人式」なのです。親である私たちは我が子をいつか懐から飛び立たせていく必要があります。

可愛い我が子だからこそ「親離れ・子離れの時」がくれば心を鬼にして背中を押し出す「成熟した親の愛情」です。その時には未練なく！後悔なく！飛び立たせていけるように、幼少期から準備していかねばなりません。

現代の日本の成人式のように「ハタチになったから、着物で同窓会に行く」という一時的なイベントだけでは「成人式」の本来の意義や価値が薄れ「心は子どものままの、大人こども」しか生まれてきません。かつては日本人の文化にも「親離れ・子離れの知恵」や「思春期・反抗期の子供たちとの向き合い方」等という点で、ユダヤ式家庭教育と共通した知恵が存在していたことでしょう。

「今だけ・自分だけ」に集中しがちな青少年・青年期の我が子に対して、先人たちが残した「人生の知恵」を継承していくこと、それこそが私たちが取り戻すべき「成人式の本来の意義」なのだと思います。

次回は第9章「苦しい時にこそ咲かせる‘ユーモアの花’」を掲載いたします。このブログ記事を通して少しでもユダヤ式家庭教育のエッセンスが皆様に伝われば幸いです。詳しい内容が気になる方はアマゾン書籍をご購読いただければ幸いです。↓